私たちがAIで「日本のモノづくり」を後押ししたい理由

私たちがAIで「日本のモノづくり」を後押ししたい理由

はじめに:産業革命を超える「波」の中で

初めまして。羽石産業知能研究所の佐藤咲祐と申します。

現在、私たちは人類史上初めて「知知能」を持つ無機物、「AI」と向き合っています。そのインパクトは産業革命以上とも言われ、私たちの生活や働き方を根底から覆そうとしています。

「AIが仕事を奪う」「格差が広がる」「人間が無用になる」 そんな不安な議論が飛び交う中で、私たちは立ち止まって考える必要があります。AIの進化は待ってはくれません。だからこそ、私たち人間が「AIとどう向き合い、どう共存するか」という問いに対するスタンスを明確にしなければならないのです。

今日は、弊社がなぜ「製造業 × AI」に取り組むのか。その根底にある「共存の哲学」について書きたいと思います。

AIに見えない「文脈」をどう翻訳するか

製造業の企業様とお話をさせていただくと、データには表れない「文脈(コンテキスト)」の重要さに気づかされます。

例えば、職人さんがふと機械の音を聞いて「おかしい」と感じる瞬間。 そこには、単なる音の波形データだけでなく、例えば、「今日は冷え込んでいるから機械が硬い」「昨日部品を変えたばかりだ」といった、無数の背景情報(文脈)が統合されています。 現状のAIは、この「前後の文脈」を読み取ることが苦手です。

だからこそ、私たちは「対話」を何よりも重視しています。 「なぜ、その判断をしたのですか?」 私たちの仕事は、職人さんの頭の中にある言語化されていない文脈を、粘り強いヒアリングによって紐解き、AIが理解できる形へと翻訳していくことです。 AIが現場で使い物になるかどうかは、アルゴリズムの性能以前に、この「人間による文脈の言語化」にかかっているのです。

「ブラックボックス」との誠実な付き合い方

AI、特にディープラーニングは、時に「なぜその答えが出たのか」が分からないブラックボックスになります。 製造業において、根拠のない判断は命取りです。もしAIの判断で不良品が出たら、それは誰の責任でしょうか?

私たちは、この問題に対して「納得感の設計」が不可欠だと考えています。 AIの「回答の自由度(創造性)」と「精度の確実性」はトレードオフの関係にあります。だからこそ、私たちは魔法使いのように振る舞うのではなく、プロとして事前にリスクを説明し、「どこまでの精度を求めるか」「ハルシネーション(嘘)をどう防ぐか」をクライアント様と膝を突き合わせて話し合います。

「AI任せ」にするのではなく、人間がコントロールできる範囲を明確にする。それが、AIを「使う側」に回るための第一歩です。

【結果ではなく「プロセス」にこそ価値がある】

最後に、私たちが最も大切にしている価値観についてお話しさせてください。

「AIで綺麗な製品さえ作れれば、職人の技術なんて不要ではないか?」 そう問われることがありますが、私たちは明確にNOと答えます。

私たちは、「過程(プロセス)があるからこそ、結果が生まれる」と信じているからです。 職人さんの無駄のない所作、試行錯誤の思考回路、素材との対話。その「プロセス」の中にこそ、日本の製造業が世界に誇る「美しさ」と「強さ」が宿っています。

もしAIが結果だけを模倣し、プロセスを切り捨ててしまったら、日本の製造業は世界と均一化し、その武器を失ってしまうでしょう。 私たちがやりたいのは、自動化による職人の排除ではありません。職人が長い時間をかけて培ってきた「知恵」や「プロセス」そのものをAIに学習させ、次世代に残していくことです。

おわりに:AIと幸せに共存するために

「AIに生産を代替されたとき、我々は何に生きがいを求めるのか?」 これは答えのない問いです。しかし、議論することをやめてしまえば、私たちはただ技術に流されるだけの存在になってしまいます。

私たちは、AIという強力なテクノロジーを使って、日本の宝である「職人の技」を守り、発展させていきたい。 そんな「AIとの幸せな共存」を、技術と対話の両面から模索し続けています。

この正解のない問いに、一緒に挑んでくれる仲間を、そしてパートナー企業様を、私たちは待っています。